~あらすじ~ ローグ志望のメランコリック* ことミヅのもとに、突如届いた請求書。
それは姉妹のキッカが勝手に購入し、勝手にミヅを支払者としてしまった商品でした。
内約は、カードが4種と 武器が1種の、総額およそ2.2Mにも上ります。
理不尽さを感じつつも、倉庫番のフクロウや アルケミストの柊に助けてもらい、
地道にコンバーターの材料や 蜘蛛の糸を集め、奮闘するミヅ。
一時はペナルティを課せられ 請求額が膨らんだものの、時の運にも助けられ、
頑張った甲斐あって、請求残高は 400kとなったのです。
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久々に姿を見せたミヅに、倉庫番のフクロウは「おゥ」と片羽を上げました。
ミヅが最後に姿を見せたのは昨年の11月。
およそ3ヶ月月ぶりの再開でした。
ミヅも片手を上げ、笑み返します。
「ご無沙汰だったなァ、ミヅ。
元気にしてたか」
「ん、久し振り。
あたしも元気だったけど、それ以上に 他の子たちが元気だったから。
こよいは イズDに はまってるし、ハルは卵割り以外にも挑戦し始めたし。
ゆらも、こないだオーラロードに突入したみたいだよ」
「おォ、そりゃめでたい。
しかしそれだと、お前さんが頑張る隙間がねぇなぁ」
「まぁ、今は請求も来ていないし。
のんびりやらせてもらうよ。
ところで――柊は?」
フクロウと話しながら周囲をうかがっていたのは、どうやら柊を探していたようです。
いつもならばここ、アカデミーの教室棟B 1Fで露店を出しているはずなのに、今日はその姿が見えません。
ミヅの言葉にフクロウが「あァ」と頷き、答えます。
「あいつは ほとんど毎日ここにいるよ。
たまに、ふらっとどこかに行くようだが。
今日もじきに来るんじゃねぇか?」
「そう……」
少し残念そうな様子に、フクロウが意地悪く笑います。
「なんだ、お前さん、あいつに ホの字か」
「は? ホ?
……ち、ちがう!
ちょっと相談事があっただけだよ!」
「はいはい、そういうことにしとこうな。
ところでミヅ、お前さんに お便りだ」
くつくつと、フクロウは楽しげに笑い、大慌てするミヅに倉庫から手紙を渡しました。
手紙は2通。
1通は、姉妹の ゆらから。
もう1通は差出人の代わりに……怪しく笑う、ウィスパー印の封蝋が おされています。
途端に、ミヅの顔が曇りました。
「……しばらく請求が来ないと思ったら……」
中身も見ずに燃やしてしまいたい衝動に駆られましたが、なんとか自制し、
ミヅはまず、ウィスパー印の封書から開きました。
『メランコリック*様
いつも ウィスパー印アンダーグラウンド・ショッピングをご利用いただき まことにありがとうございます。
さて、ご注文いただきました商品でございますが、
お客様ご希望価格のものが入手できておりません。
大変申し訳ございませんが、今しばらくお待ちいただけますよう、お願い申し上げます。
今後とも ウィスパー印アンダーグラウンド・ショッピングを よろしくお願いいたします。
注文明細 ――
・マリナc 500.000z → 300.000z お支払済
・白蓮玉c 500.000z → 450.000z お支払済
・プランクトンc 250.000z お支払済
・サベージベベc 400.000z
・+10 s4マインゴーシュ 650.000z → お支払済
総計 2.2500.000z
お支払い予定金額 ――
・サベージベベc 400.000z
お支払期限について ――
ご請求より14日以内。
*お支払期限を過ぎますと、1日当たり5%の利息が付きます。
ご注意ください。』 読み終えたミヅは、ひとまず胸をなでおろしました。
どうやら請求書ではなく、なかなか商品が届かないことへの詫び状のようです。
ほっとしたミヅは、次に ゆらからの手紙を手に取ります。
開封し、手紙と取り出すと、一緒に入っていたらしいSSが1枚、落ちてしまいました。
それを拾ったミヅは、
「……っ!!?」
なぜか声にならない声を上げました。
ぎょっとしたフクロウが、ひょいとミヅの手元を覗き込むと……

「うおっ!!?」
こちらもやはり、叫び声を上げました。
「どどどどうしたんだ、これ」
「え、待って待って、まだ手紙を読んでない!
……え、ええとね、
LA+JTでスノウアーが ほぼ一確っぽいから・ってオーフィンに誘われて行ってきたみたい、氷の洞窟。
そこで出たらしいよ。
それで……その売り上げで、ウィスパー印の支払いをして欲しい、って」
「なんとまぁ……」
フクロウは改めて、届けられたSSをまじまじと見ました。
「……しかし横暴な姉妹だな。
出してくれた弟に対して この言い草……」
「て、てんぱってたんだよ、きっと。
慌てちゃって、思わずGチャットで誤爆した・って書いてある」
「ほ、ほゥ。
――しかし、よかったな、ミヅ。
これで支払いの目途が着いたじゃねぇか」
「え?
あ、ああ……」
フクロウの言葉に、なぜかミヅは言葉を濁します。
そしてしばらく考えた様子で口をつぐみ、やがてきっぱりと顔を上げました。
「――いや、これはやっぱり受け取れないよ」
「あ?」
「せっかくやり始めたことだからね。
あともう400kだし、支払は自分の力で やり抜きたい。
それに、ゆらも のんびりだけど、オーラロードを歩き始めたみたいだし、
この売上は、ゆらの発光式の支度金に取っておいて欲しい」
ミヅの言葉に、フクロウは 目を瞬いて。
「お前さん……不器用だねェ」
しみじみと、心底あきれた様子で言われた言葉に、
「そうだね」と、ミヅは苦笑して返しました。
ミヅは もうしばらく、フクロウと 他愛ない話をして時を過ごしましたが、
結局その日、柊は現れませんでした。
諦めて帰ろうとするミヅを、フクロウが呼びとめます。
「相談事があったんだろう?
伝えておこうか?」
「いや……いいよ、大したことじゃないから。
またね、フクロウさん。
今度は、近いうちに」
「おう、待っているぞ」
フクロウの言葉に手を振って、ミヅは背を向けました。
ウィスパー印への支払いが終わったら、短剣を置こうと思うんだ――
そう彼等に言ったら どんな反応が返ってくるのかなと、そう考えながら。
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(ミヅがローグに転職しないのも同じ理由。
せっかく始めたことなので、シーフのミヅのままで やりきりたいな・と。
……うん、だから狩りに行かなきゃね、ミヅで……)
(と、とりあえずハルの トール火山秘密クエと 名無し入場クエが終わったら…!

)